高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの(東京国立近代美術館)

 「絵を描かない高畑の「演出」というポイントに注目」と企画展の意図に書かれているのですが、それが成功しているのかというと、何とも言い難いという感想です(冒頭で言ってしまうのもアレですが)。

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 奇しくも今年、富野由悠季監督の展覧会も開催されていますが、富野監督は当初「演出家の自分に展覧会で展示するものなど無い」と反対されたそうです(御大はツンデレなので一応言ってみた感はあるのですが)。それは一理あるというか、絵はアニメーターや背景美術の方が描かれたものなので、それらに対し、脚本や絵コンテから、演出技法とか作家性がどのように込められているか、という読み解きが本展で展示されているのかというと、そうでもなくて、まあ回顧展ということですかね…

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 資料として見られてよかったと思ったのは、『太陽の王子 ホルスの大冒険』の時に、製作担当の原徹氏が、高畑氏・大塚康生氏両名に対し、スケジュールの遅延状況報告とリカバリ対策提出を求める文書でした。そんなもの残してたんかい!業界に関係無く、プロジェクト進捗に関わったことのある人なら胃がキリキリと痛みそうな資料です。

 ちなみに原徹氏は『ホルス』の責任をとって東映動画を去ることになるのですが、その後設立した制作会社、トップクラフトで『ナウシカ』を引き受けた結果、スタジオジブリに改組され、またもやトップクラフトを去ることになります。酷いですね!

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 文句を言いつつも、森康二氏の描くヒルダがもう、何故あんな少ない線描でこんなに美しいんや…と、物販で何か買おうとしたのですが、何故か森康二氏のヒルダを使用したものが無い。代わりに売られていたのは、奥山玲子氏原案(没)のヒルダ。NHKの陰謀ってことは無いでしょうけど(奥山玲子氏は『なつぞら』の主人公のモデル)、森康二氏の絵は版権に問題あるんですかね。

高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの | 東京国立近代美術館

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