「窓学展 ―窓から見える世界―」(スパイラルガーデン)

休日の原宿は、船底のフジツボというか人がゴミのような、動くこともままならない混雑で、日本は観光立国化してるねえ、とぼんやり感じながら表参道へ。

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 YKK APが2007年から研究を行なっている「窓学」が10周年ということで、研究成果の展示を行なっています。

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 研究展示の他、アーティストが窓をテーマとした作品も展示されています。レアンドロ・エルリッヒ氏(金沢21世紀美術館の〈スイミング・プール〉の人です)の〈Window and Ladder - Too Late to Ask for Help〉は、宙に浮いた窓枠に、梯子が架けられたビジュアルが、人を惹きつける魅力を十分に持っています。

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 展覧会のタイトルの「窓から見える世界」とあるように、窓は外界の景色を囲う額縁だと思っています。鉄道に乗って見える景色も。

 また、窓ではありませんが、ドラえもんひみつ道具「どこでもドア」を思い起こします。作品内における機能は物理的なショートカット装置ですが、読者側にとっては、ドアの枠の内側と外側の、日常世界と異界の反転を描いた、額縁のような機能を持っていると思います。

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 限られたスペースで研究展示も工夫されています。ちょっと見辛いですが、このテーブルは村松伸氏の「窓の進化系統学」です。

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 このテーブルは中谷礼仁氏の「窓の記憶学」。サンプリングされた様々な建築の「窓」がポストカードになっていて、持ち帰り可能になっていました。こちらも透明ボードの説明が見辛いのですが、「日本建築に窓はない。あるのは柱と柱の間だけである。そこに取り付けられる装置のなかに窓的なものがあるのだ。」という書き出しに、脳が痺れます。

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 建築模型が展示されているテーブルは、小玉祐一郎氏の「窓の環境解剖学」。

 基本的に展示は全て撮影可能なのですが、唯一撮影不可のテーブルが、五十嵐太郎氏の「窓の漫画学」。ドラえもん等の日常が描かれたコミックが置いてあり、窓が描かれた頁に、発表年数が記載されたタグが付けられていて、コミックにおける窓の変遷が確認できる仕組みになっています。

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 写真家・ホンマタカシ氏の作品〈La Tourette Monastery, France〉。ル・コルビュジエが設計したラ・トゥーレット修道院の宿坊部屋自体をピンホールカメラに仕立て上げ、窓から見える風景を撮影したそうです。このブースはその部屋を原寸大に再現して撮影したイメージを貼り付けたものです(何言ってるのか判らないという方、済みません)。余談ですが写真家の宮本隆司氏が以前、大きな箱に自分が中に入って外界をピンホールで撮影する実験をやっていたのを思い出しました。

 会場のスパイラルのスペースはあまり広くなく、コンパクトな展示ですが、中身の詰まった面白い展覧会です。

窓学10周年記念 窓学展/窓学国際会議 | YKK AP

お題「印象に残っている展覧会」